肺結核とはどんな病気?
肺結核は、結核菌の感染により肺に炎症を起こす感染症です。日本では結核患者数は減少傾向にありますが、依然として注意が必要な疾患です。
肺結核は早期に適切な治療を開始すれば治癒可能な疾患ですが、診断が遅れたり治療が不完全だったりすると重篤な状態に陥る可能性があります。当院では、迅速で正確な診断と適切な治療により、患者さまの早期回復を目指しています。
結核菌について
結核菌は抗酸菌の一種で、空気中でも長時間生存できる特徴があります。増殖速度が遅く、他の細菌と比較して特殊な性質を持っています。結核菌は酸素を好む好気性菌で、酸素濃度の高い肺の上部に病変を作りやすい傾向があります。
肺結核の原因と感染経路
肺結核の感染は、結核菌を含む飛沫核の吸入により起こります。感染性のある肺結核患者が咳やくしゃみ、会話をする際に空気中に放出された微細な飛沫核を、周囲の人が吸い込むことで感染が成立します。密閉された空間での長時間の接触や、換気の悪い環境では感染リスクが高まります。
感染しても必ず発症するとは限らない
結核菌に感染しても、すべての人が結核を発症するわけではありません。感染者の多くは免疫力により菌の増殖が抑制され無症状のまま経過します。しかし、免疫力が低下した場合には、体内に潜んでいた菌が再び活動を開始し、結核を発症する可能性があります。
肺結核と風邪の見分け方とは?症状をチェック
肺結核の初期症状は風邪と似ているため、見分けることが困難な場合があります。しかし、以下の症状に該当する場合や、違和感のある症状がございましたら、肺結核を含めた詳しい検査が必要です。
肺結核の主な症状
呼吸器症状
- 長期間続く咳
- 血痰や膿性の痰(進行すると血液混じりの痰が出現することがある)
全身の症状
- 微熱が続く
- 体重減少と食欲不振
- 全身倦怠感
肺結核になりやすい人の特徴
肺結核は免疫力が低下している方に発症しやすい傾向があります。以下のような特徴を持つ方は、特に注意深い健康管理が必要です。
- 高齢者や乳幼児(免疫機能が未熟または低下している年齢層)
- 糖尿病、悪性腫瘍などの基礎疾患がある方
- 免疫抑制薬やステロイド薬を長期間使用している方
肺結核の検査方法
肺結核の診断には、画像検査、喀痰検査、血液検査などを組み合わせて総合的に評価します。胸部レントゲンやCT検査により肺の病変を確認し、喀痰の抗酸菌検査により結核菌の検出を行います。
また、結核菌の遺伝子検査により迅速な診断も可能になっています。確定診断には培養検査が重要ですが、結果が出るまでに数週間を要するため、臨床症状と画像所見を総合して治療方針を決定することもあります。
肺結核の治療方法と期間
肺結核の治療は、複数の抗結核薬を組み合わせた薬物療法が基本となります。治療期間は一般的に6か月以上と長期間にわたりますが、適切な治療により完治が期待できます。治療初期には2~3種類の薬剤を使用し、その後は2種類の薬剤による治療をします。
治療中は定期的な検査により効果判定と副作用の有無の観察を行い、必要に応じて薬剤の調整を行います。治療を中断すると薬剤耐性菌が発生する可能性があるため、医師の指示に従って最後まで治療を継続することが重要です。
肺結核は再発する?
肺結核の再発は、病型や初回治療の完了状況により異なります。適切な治療を完了した場合の再発率は低いとされていますが、完全にゼロではありません。再発の形態にはいくつかのパターンがあります。
原発性結核の場合
初回感染による原発性結核を適切に治療した場合、再発のリスクは比較的低いとされています。しかし、免疫力が著しく低下した場合には、体内に残存していた菌が再活性化する可能性があります。
二次結核の場合
過去に感染した結核菌の再活性化により発症する二次結核では、治療後も再発のリスクが存在します。特に高齢者や免疫力が低下している方では注意深い経過観察が必要です。
粟粒結核の場合
血行性に全身に結核菌が散布される粟粒結核は、治療後も長期間にわたる経過観察が必要です。免疫状態の変化により再発する可能性があるため、定期的な検査が重要です。